現代マーケティングの分野で常套句のように使われる言葉、その一つに「インサイト」があります。

先日の大阪支部3月度定例会の場でもキーワードの一つとなり、パネルディスカッションで議論したばかりです。

インサイトとは、
「消費者に潜在しているニーズで、製品をはじめとしたマーケティング活動に活かすことが出来るもの」で、「リサーチ部門だけでなく、商品開発部門、広告プロモーション部門など様々な部門が共有し、実行に移す事で、はじめて成果に繋がる」と説明されます。

ん?、これってかなり昔から耳にしていたような。
小生は、もう40年ほど前、縁あって当時は水口健次が会長職を勤めていた、日本マーケティング研究所(JMRグループ)に入社しました。

水口は、1983年に初版を発行した「マーケティング戦略の実際」(日経文庫)で、マーケティング・リサーチの任務は、「顧客の願望」を研究し、その願望を満たす「商品とサービス」とを見つけ出し、その商品とサービスとが「顧客に上手く到達するような活動」を導き出す事だと説明しました。

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ところが、この「顧客の願望」が、顧客である生活者自身にとって知覚しにくいもの「知覚されないニーズ」になってきたので、その任務がとにかく困難になってきていると言っていました。

だから、このニーズを探索するリサーチには「対象を変える」「聞き手を変える」「聞き方を変える」などの工夫が必要で、極めて新鮮な顧客・生活者理解力が要請されると言うのが水口の主張でした。

Mizuguchi History

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さらに、この課題はリサーチ担当者のリサーチスキルが向上すれば解決出来るというものではなく、例えばリサーチ結果を、開発技術者や広告コミュニケーション担当者によくわかるように説明する事も問われるし、どういう結果が確認されたらどういうマーケティング戦略を組むのか、そこを予め検討しておく事が極めて大切とも言っておりました。


これはまさに現代の「生活者インサイト」そのものです。


良い成果へとつなげるための鍵は何か?マーケティングパーソンには越境と越権の気迫が求められる…これも、水口から良く聞かされた言葉でした。

2022年4月8日
株式会社K-Wod
代表取締役 舘岡 成之
<(元)日本マーケティング研究所>