MCEI大阪8月定例会が開催された8月6日は、大阪府からのミナミのお店に対して営業時間短縮、休業要請のあった初日でした。その大変な中、ご登壇いただいたのが千房ホールディングス株式会社 代表取締役社長の中井貫二さん。「経営は終わりのない駅伝」と題してお話いただきました。

千房さんといえば、個人的にはラジオ大阪の番組「鶴瓶・新野のぬかるみの世界」がきっかけで、大学生の頃に初めて行ったのを思い出します。今でも“ぬかる民”の裏メニュー「ぬかるみ焼き」は注文があればどのお店でも食べることが出来るとのことですよ。

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1973年創業の千房さん、現在、FCを含めて、千房グループで国内79店舗、海外7店舗を運営されています。6月に虎ノ門ヒルズにオープンした「琥 千房 虎ノ門」は千房グループ最高峰の業態「クラシックス」で、お客様の単価5万円と超高価格にもかかわらず大人気というから驚きです。百貨店やホテルへの出店、機内食の提供など業界初のチャレンジをされています。昔から、従業員の皆さんに常々言ってきているという“やらかす千房”の合言葉が活かされています。「『や』わらかな発想で、『ら』しさを大切にして、『か』んがえたことは、『す』ぐにやる!」を意味しています。千房のオリジナリティの源ですね。

中井社長が掲げられた3つのテーマは、「グローバル視点」、「受け継がれるおもてなし」、「飲食店は共育産業」。「グローバル視点」では、インバウンド、アウトバウンドのシナジー効果やお客様に喜んでいただくための環境整備に注力。日本人、外国人も分け隔ての無いおもてなしで期待に応えたい“大阪らしさ”を伝えたいということで、「まいど」、「おおきに」といつも通りの接客をされています。ハラル対応、グルテンフリー対応もすでに導入されています。先日、私もグルテンフリーのお好み焼をいただいてみました。ふわふわとしていてこれが美味しい、当たり前のように美味しいのがいいですね。

千房さんでは「おもてなし」のマニュアルがないとのこと。“見返りを期待しない、お客様の想定を大幅に上回るサービスを提供する”、この「大幅に上回る」というのがポイントです。

「飲食店は共育産業」という点では社会貢献として「出所者雇用」を熱心に続けているのは有名です。社員教育は、外部ではなく社内のスタッフで実施しています。“共育”で“人財育成”。

「ピンチはチャンス、チャンスはチェンジ、チェンジはチャレンジ」。

コロナ禍の影響で千房グループさんも大きな打撃を受けています。先ずは、売上・利益効率・体制等、短期目標達成のために、”Reborn Project”としてスクラップ&ビルトや体制強化などに着手。同時に、中長期目標を掲げ、外食企業の可能性の追求にとどまらず、既存資産を活用した食をコアにしたコングロマリットの構築に向けて始動されています。

“「従業員の幸福」がなければ「お客様のご満足」はない、「お客様のご満足」がなければ「会社の発展」はない”、という三位一体経営で、「世界一従業員が幸せな会社にしたい」。

子どもの時から「従業員のおかげで食べていけてるんやぞ」と言われて育った中井社長の目指す所です。

お話の中で、随所に、現会長であるお父様の創業者理念を大切にされてることが出てきました。事業を継承していく面と革新していく面、この二つを兼ね備えているのが中井社長ですね。

講演の題目として挙げられた「経営は終わりのない駅伝」。マラソンは一人で走るためその距離も時間も限られていますが、駅伝はタスキをつなぎます。中井社長は、創業者のお父様、急逝されたお兄様を経て、“千房経営”のタスキを受け取られました。経営者の大きな役割として、100年企業に向けて自分のタスキをどうつないでいくかを考えておられることと思います。

6月、新聞に掲載されていた千房さんの広告、強烈な印象が残っています。

「負けへんで 絶対ひっくり返したるっ “美味しい”はコロナにまけへん。」

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