理事長の橋詰です。4月度定例会(2019/4/11)のレポートです。

はじめに

2019年度始めの定例会が開催された。おりしも造幣局の桜の通り抜けが始まっており天満橋のターミナル周辺はかなりな人で混雑していた。今年は花冷えというにはあまりにも寒い日が多く、桜も長く楽しめるそうだ。関東から東北、北陸、北海道は四月の積雪となった。気候変動を昨年よりも現実感をもって感じながら、今年もMCEI大阪の新しい年度がスタートした。テーマは昨年に続く「気づき」だが押し寄せる巨大な情報の海に流されず、五感を研ぎ澄まして目に見えない“兆し”に気付いていきたい。

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木田さんのコト。

大阪出身の木田さんは東京でキャリアのスタートを切った。最初はテキスタイルデザイン事務所での仕事で、あまりマーケティングとは関係が無かったと語る。仕事を続ける中で「クリエィテイブだけではモノは売れない、売ることが大事」だと気付く。その後商業コンサルティング会社で全国各地のショッピングセンターや専門店の開発・診断・指導に関わったのち、広告代理店を経て、再び大阪に戻り女性マーケティング専門会社のチーフプロデューサーを務めた。2007年より「女性マーケター養成講座」を始め、2008年のリーマンショックで経済環境や市場が大きく変化する中で出産を経験し、出産を通して女性がどう変わるかを自らの体験で実感した。2009年11月より(株)レスコフォーメイションの常務取締役に就任する。「大坂でマーケティングができるの・・・?」(本人談)その頃MCEI大阪支部で講演していただいたと記憶する。2013年より独立して株式会社女ゴコロマーケティング研究所を設立、ご自身が企画、講師を務める「女性マーケター養成講座」では女性ならではの発想力や企画力、プレゼンテーション能力を高め、企業の業績に貢献できる人材育成を行い、現在790人を超える受講生を数えている。10年前は女性のマーケターはほとんどいなかった。最初は男性のための講座であったし、今でも依頼者の90%は男性である。まだまだ企業で決裁権を持っているのは男性なのだ。

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人口が減るなかで経済を回していくために女性就労や外国人の就労促進そして高齢者雇用促進など国が主導する動きは働く環境を大きく変えている。女性のライフスタイルは労働・消費・出産という構造を基本とするならば、仕事と育児という重い役割を担うことになる。経済優先で効率的に社会を回していく自由主義経済社会において、言い換えれば男性的論理が優先される社会においての子育ては楽ではない。木田氏は語る、「今大変な処にフィットするビジネスが必要とされている。ビジネスの本質は人間が生きていく中での負の解消である。」女性の社会進出が増え、所得が増加し、時間のやり繰りに困り、ストレスが増している。「ここで女性の本当の幸せとは何か?何に困っているのか?」を問いかけるところにビジネスの機会が隠れているという。女性視点のマーケティングは女性活躍推進と併せて進めていくことが必要である。企業は女性に対する「放任」や「過干渉」を軽減し、男女の関係性をかえていくことが大事、女性は表面的な事象を見抜く、女性視点で問題点は何か、ゴールはどこかを問うことにより「女性活躍社会」への道程のマイルストーンが明瞭になる。

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男性脳と女性脳のこと

男性脳はシステム脳といわれ左脳思考で、女性脳は共感脳といわれ右脳思考である。左脳と右脳をつなぐ脳梁が女性のほうが大きく、脳全体を同時に使うので事象にたいして共感力が強く表面的な事象を見抜く人が多い。会話をするときもそうであるが男性は言語中枢がある左脳だけを使って会話をしていて、理論立てて必要事項を話すが、女性は無駄な話も会話に入ってくる傾向がある。マーケティングに照らし合わせてみると、男性は商品の良し悪しを理性的に考えて商品・サービスを評価するが、女性は無意識に感じる快・不快で好き嫌いを感じ取った上で評価する。この快・不快の正体を知り、適切に対処することが女性へのマーケティングでは重要であると木田氏は語る。インターネットが爆発的に普及する1990年代中旬以前はこの“なんとなく”が商品の価値判断に大きな影響を与えていて、マーケティング戦略や広告表現の方向性を決定していた。コマーシャル表現は女性的・感性的な判断が優位を占めていたのだ。スペックにこだわる男性脳、イメージにこだわる女性脳に働きかけていた時代でありモノがモノとして神話性をおびていた時代である。しかし、インターネット普及後はこのような「衝動」は力を失っていった。情報の刷り込みが過剰に増加しAIが主導する男性脳型の価値判断が主流となっているからだ。世界24ヶ国でNo.1ベストセラーになった「話を聞かない男、地図を読めない女」という本がある。日本で累計350万部、全世界で600万部のミリオンセラーである。男女の考え方や行動の違いは、脳が使われていたり反応する場所や、分泌されるホルモンの違いによって引き起こされると言われている。この男女の認識領域のカタチを重ねるとL字型になり、男女の認識領域の重なるのは直角の部分になる。この様に認識領域が食い違っている人達がコミュニケーションをとると「あ、この人分かっていない」「バカなんじゃない?」となってしまう。また男性と女性の違いでよく言われるのが空間認識の違いである。地図を見たとき方角や何メートル進むかを示されると理解できる男性と目印になる建物などランドマークを示されると理解できる女性とかの事例である。男性と女性に建築の設計図を見せたとき男性は脳のある決まった場所が集中して働いているのに対して、女性の脳は働いている場所がこれといって決まっていなかったという話もある。とはいえ男性でも方向音痴の人はいる、男女の違いは確かにあるが、誰しも男性性と女性性の両方を持っているわけで、どの部分が女性よりで男性よりかを把握すると自分自身をもっとよく理解できる。脳にかかわる世間の関心は強く、様々な事が語られている。科学的な根拠がなかったり、あったとしても曲解、拡大解釈して、結果誤った理解を広めてしまうことも絶えない。2009年にOECD(経済開発機構)が公表して話題となった「神経神話」”Neuromyths”には「人間の脳は全体の10%しか使っていない。」「右脳人間・左脳人間が存在する」「脳に重要な全ては3歳までに決定される」「男性の脳と女性の脳は違う」などが上げられている。「時間の知覚」や「多感覚統合」含めて脳はミステリアスかつスリリングなのだ。

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ジェネレーションYとミレニアル世代

時代を30年もさかのぼる1980年代は、女性像も固定化されていて女性の社会的イメージもステレオタイプでひとくくりにされていた時代であった。

現在の消費をひっぱる20代から30代の主婦層は消費にシビアで、身の丈を楽しみ、男女平等を唱えるデジタルネィティブである。このミレニアム世帯は2025年に日本の家族世帯の30%を占めることになる。幼少期からデジタル化された生活に慣れ親しみ、ほとんどの人が日常的にインターネットを使いこなしている。新千年紀が到来した2000年前後以降に社会進出した世代という意味でMillennial Generationと呼ばれる。このミレニアル世代を包含する世代表現としてジェネレーションYが在る。ジェネレーションYは、アメリカにおける1980年代から1990年代に生まれた世代である。ベトナム戦争終結後からベルリンの壁崩壊による冷戦終結という歴史的転換点を経て、アメリカ同時多発テロ事件までを経験した、両親が第二次世界大戦後生まれの子供たちである。彼らの生い立ちと照らし合わせてみると、幼少期に冷戦の終結と社会主義の凋落に遭遇し、思春期のティンエイジャーの頃インターネットの爆発的普及を経験し、そのためインターネットを駆使して活躍する人が多い。<アメリカ国家安全保障局(NSA)が秘密裏に行ってきた個人情報収集の手口を告発したエドワード・スノーデンもこの世代である。>成人を迎えるころに同時多発テロ事件が起こり、そのため政府の経済や社会政策への介在を肯定的に見る傾向が強く、バラク・オバマの大統領当選に強い影響を与えたと言われている。1990年代にはインターネットの普及に呼応するように、高校生や大学生の間で麻薬などのドラッグが広まった。それにより犯した犯罪で刑務所から出所後も就職できず、再びドラッグの乱用や犯罪を繰り返す若者が急増し、彼らは「新失われた世代」と呼ばれるようになった。ほとんどの人がインターネットを使いこなすため、それまでの世代とは価値観やライフスタイルが大きな隔たりがあるとされる。アメリカのジェネレーションYは10代でソ連崩壊とグローバル資本主義に遭遇したため、プレカリアート(非正規雇用労働者)の多い世代である。日本におけるジェネレーションYは「氷河期世代」と呼ばれているが「ロストジェネーレーション」(アメリカではジェネレーションYの僧祖父母世代を指す言葉)と呼ばれることも多い。ロシアのジェネレーションYはソ連崩壊後にグローバル資本主義による不況(ロシア財政危機)に巻き込まれたことでプーチン大統領の反米・大国路線を支持するものが多い。韓国のジェネレーションYは「88万ウォン世代」と呼ばれ、10代でアジア通貨危機に遭遇したため、ここでもプレカリアートが多く「新自由主義」に反発するものが多い。こうした時代背景は、この世代の政治・経済への意識に大きな影響を与えている。

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ミレニアル世代の特徴を一般論として触れておきたい。

・デジタルネィティブ世代である。

・個人主義を重視する一方でSNSでのつながりも求める。

・所有よりも共有に価値を見出す新しい消費スタイルを持つ。

・本質的に良いものを求める(非ブランド志向)

・倹約(節約)を好む。

・商品をインターネットで購入することを好む

・仕事には個人の成長や向上を求めている

・会社への帰属意識が低い

・仕事に個人の成長や向上が無ければ早期に転職を考える。

・権威主義的な指導よりも、コーチング的な指導を好む。

 

ジェネレーションZからαへ

1990年代以降2010年頃に生まれた世代を指す、ジェネレーションZは現在10代で購買力も持っていて、社会全体で存在感を増してきた世代である。ミレニアル世代の集中力持続時間は12秒、それに続くジェネレーションZのそれは8秒である。生まれたときにすでにインターネットもパソコンも普及していて、2017年アメリカのMND研究所の調査では中高生の9割が学習にスマートフォンを使用し、2割以上がスマートフォンの利用時間6時間以上である。日本では1996年前後生まれの世代を96世代と呼ぶこともある。96世代は日本の先進的なモバイルブロードバンド環境を背景に、様々な携帯通信機器を利用して動画コンテンツを視聴するとともに、クラウド環境での集合知(衆合知)を活用する世代であり、「ネオ・デジタルネイティブ」とも呼ばれている。FacebookやTwitterなど、革新的ビジネスの創業者の存在や身近なユーチューバーなどの活躍により「いい大学に入って、いい企業に勤める」以外にも優れた教育が受けられ、いくつもの道があり、成功方法があることを知っている。ジェネレーションZは野心的で、目的意識が強いイノベーターなのだ。幼い頃から世界中の情報を得ることができたこの世代は、海外のコンテンツにも馴染んでいて、様々な事象をグローバルな視点でとらえることができる。その消費感としては、他の世代のように所有している商品が自分を表現する「物質主義」ではなく、消費行動自体が自分を表現するものと考え、「影響力」を重視する独特の消費感を持っている。「インスタ映え」など、仲間と話題を楽しむために消費を行う。政治感においては、人種やLGBTなどの「性」の問題に関して議論が高まる中で成長しているので、人種や性別、性的指向において偏見がなく平等な考えを持っている。世界経済フォーラムの調査によるとZ世代の87%が社会や環境問題に関心を持っている。多様性を受け入れ社会の問題には穏健なリベラルであるが、財政・安全保障問題には穏健な保守的見方をするという。ミレニアル世代の前半と後半で特徴に違いがあるので、ジェネレーションZとして区別されるようになったが、真のデジタル世代といえるZ世代は学校教育にこだわらず、「影響力」を重視する消費行動は、ミレニアル世代前半までの世代を超えて共通していた価値観を大きく変え始めている。その「拡散力」を持って。さらにジェネレーションZの次の世代として、今ジェネレーションαが考案されている。

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新しい世代に向けて、非ず、非ず、結びに非ず、

ステレオタイプは元々印刷技術のステロ版(鉛板)が語源となっている社会学の用語で、事象の見え方、捉え方を示し、印刷物の様に「型を用いて作られたかのように全く同じもの」「すでに完成されたものとして扱われているもの」という意味で多くの人に浸透している認識の固定観念、特に先入観、思い込みを指す。身の周りには世代の区分けや社会規範、常識など判で押したような、紋切型の考えが定着していることも多い。物語やフィクションなどで造形される人物像などはその典型的なカタチで、これらは神話類型に通じ、物語の基本的な類型構造であり、人間心理の普遍的・先天的な在りようと考えられる。近代において大衆社会とマスコミュニケーションが成立すると、政治・経済・社会的な目的において、過剰に単純化され類型化されたイメージが広く一般の人に流布するようになり、文字通り紋切型な把握や観念や思考となって定着するようになって、客観的根拠もなく鵜呑みにするこのことで様々な問題を引き起こしていることも事実である。

今回の講演テーマは男性のココロと女性のココロの違いを分析しマーケティング戦略につなげることである。確かに脳や体には男女の性差が存在し、地図を読めない人は男性より女性に多いのもまた確かである。だが生物種として人間を捉えればその特徴は「道具の作成とその使用」であり、道具を使って種が持つ生来の不利を補うことで「万物の霊長」となり産業革命を数次にわたって成し遂げてきた。しかし1990年代以降インターネットなどテクノロジーの進歩が爆発的に進む中、多国籍企業が世界的分業体制をつくりあげ、「グローバルバリューチェーン」と呼ばれる複雑な供給網が張り巡らされる時代に脱中心化が進み、主役がモノからデータへ移行する。

カリフォルニア大学生物工学教授 下条信輔氏によると、<現在社会は「ブラックボックス化」と「近視眼化」「健忘症化」という2つの特徴を挙げられる。「近視眼化」は目先の利益ばかり追いかける習性で、未来に向けての視野の狭さである。これと対になる過去に向けての視野の狭さが「健忘症化」だ。他方世界中の因果的なしくみが複雑なネットの網の目でその仕組みが分からなくなり、あるいは政治的な理由やマーケティング上の理由で企業が意図的な隠蔽をすること「ブラックボックス化」と呼ぶ。いうまでもなく近視眼化、健忘症化の結果であるとともに原因である。科学技術、特に情報技術が進展するとともにこれらが互いに助長しあって、坂道を転がり落ちるように進む。」ブラックボックス化は現在の潜在認知を大きく変容させているのだ。>

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この局面では、男だろうと女だろうと「人とは何か」を問いかけることが重要なのでは。木田氏の個人の潜在的なココロ<潜在意識><深層心理>掘り下げるアプローチは極めて有効であろう。