理事長の橋詰です。12月定例会(2016/12/08)のレポートです。

今年も12月師走です。
本年最後の講師はネスレ日本株式会社 Eコマース本部 ダイレクト&デジタル推進事業部デジタル推進マーケティングユニット ユニットマネージャー 山野 和登氏です。

まず初めに、未来を予測し、未来がもたらす機会を捉えるために、自らを適応させ続けることで、成功を築いてきたネスレとは!

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ネスレは今年2016年に創業150年を迎え、その歴史のなかで赤字は一度のみ。
右肩上がりの成長を果たしてきてその株式時価総額は世界13位、世界189カ国・地域でビジネスを展開する欧州最大の企業である。
本部はスイスのヴェヴェーで年商は10兆円、社員数は335000人で工場は全世界85か国に436箇所を有する、まさに“食の帝国”である。
そのネスレ会長のピーター・ブラベック氏は、1997年からCEO、2008年からは会長を務めるネスレの皇帝である。世界経済フォーラム(ダボス会議)でも中心的役割を担いドイツのアンゲラ・メルケル首相や中国の温家宝元首相とも議論を交わす。俳優顔負けの整った顔立ちで世界の大御所たちをその魅力に引き込んでいく。

ブラベックは母国オーストリアで「成功」をテーマに講演を行っている。その中で彼はこう語っている。

「辞書を引くと、“成功”には二つの意味が書かれています。一つは権力、名声、富を得ること。もう一つは成果。私は後者の意味が近いと感じます。もし私が目指すものが富であれば、私はネスレに商品を納める個人事業主になっていた。ネスレは原材料費をけちったりしないので。名声が欲しかったら、俳優か音楽家になっていただろうし、権力が欲しかったら、政治の道に進むべきでした」

彼にとって成功とは、努力の結果生まれる「成果」だ。
事実、彼は成果のために名声を犠牲にした。
水資源問題の解決のため、水不足に陥る危険性を叫び、批判の矢面に立っている。「水は無料同然と思われているが、我々は考え方を改める必要がある。プールや洗車に使用する水は人の権利ではない。だから利用価格を上げるべきだ。」彼の発言は、ミネラルウォーターの事業を持つネスレへの利益誘導だと一部の政治家や非営利組織は猛反発した。だがこの物議を醸す発言は、G20などの国際会議で水枯渇問題の議論を始めるきっかけとなった。彼らしいエピソードである。前国連事務総長のコフィ・アナン氏はブラベック氏を評して「彼は、ネスレのトップということだけでなく、未来の企業の在り方を示してきた、国際企業のリーダーだ!」と評する。

ブラベックはネスレの経営においても成功を収めている。彼がCEOを務めた97年以降、ネスレの時価総額は実に4倍以上に拡大している。ネスレは社会との関わりの中で「共通価値の創造」(Creating Shared Value=CSV)を掲げている。優れた株主価値をもたらすと同時に、人々の栄養・健康・ウエルネスの向上支援する企業を築くため、ネスレが事業全体で執っているアプローチである。栄養に加えて水にも重点を置いている。世界の多くの地域で水不足が極めて深刻な問題となっており、水はまさに食糧安全保障の要であるからだ。さらに事業の長期的成功に関わる農村開発にも力を入れている。事業展開するそれぞれの国が抱える問題をコンプライアンスを順守しながら考えて、消費者と共に新しい価値を作り出していき透明性のある報告のもとにサステナブルなビジネスにつなげていくのである。
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ネスレ日本について!

日本ではコーヒーの「ネスカフェ」とチョコレート菓子の「キットカット」を知っていても、その製造元であるネスレに対する印象と認識は薄いかもしれない。
英語読みの「ネッスル」(94年にネスレに変更)親しみを覚える世代も多いだろう、事実私もそうである。ネスレは、コーヒーや菓子だけではなく、ミネラルウォーターや冷凍食品、ペットフードなど約2000のブランドを持ち、世界189か国でビジネスを展開する、“食の帝国”である。アップル、グーグル、フェィスブック・・・。
この20年シリコンバレーで誕生したIT企業が我々の生活を一変させ、その企業価値を高めていった。現在の時価総額は20年前のそれと比較すると、上位が軒並みIT企業に入れ替わっている。この間日本企業は凋落の一途をたどり、上位から日本企業の名が消えていく中、食品産業というオールドエコノミーを主戦場としながら、ネスレは順位を38位から13位まで押し上げた。今年2016年6月、黄金期を築いたブラベックが会長を退任すると発表。巨大企業の方向性を変える「成果」に手応えを得ていた。2001年に食品企業から「栄養・健康・ウエルネス」企業への転身を宣言した後の成果である。

ネスレ日本は「100年企業」である。1913年創業で最初はインスタントコーヒーから始まった、戦後ブラジルではコーヒー豆が余りその問題解決として日本でインスタントコーヒーとして販売したのだ。

離職率が非常に低く、社外へ転身して全容を語るような人物がほとんどいなかった。ネスレ日本は10年前からほとんど成長がとまっていた。先進国の中で最も早く縮小する経済の現実に直面していた日本。人口減少・高齢化・デフレの中で日本ネスレは新しいビジネスを開発し今後100年間の日本が直面する問題を解決していく使命がある。そのイノベーションを担うためのダイレクト&デジタル推進事業部のミッションはEC事業(ネスレ通販)の拡大、新規事業の立ち上げ、IoTやAIの活用、他企業とのコラボレーションなど社会に貢献できる新サービス、良いサービスを推進していくことである。

そのようなネスレ日本がここ数年目覚ましい成長を見せた。高岡浩三ネスレ日本株式会社代表取締役兼CEO<「キットカット受験生応援キャンペーン」を成功させるなど数々の成功を樹立。>率いる日本ネスレが展開する「ネスカフェアンバサダー」である。職場で安価にコーヒーを楽しめるモデルが大ヒットして、日本発のイノベーションとして脚光を浴びたのである。
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ネスカフェアンバサダーはネスカフェ ゴールドブレンド バリスタの展開から始まった。背景には家庭内コーヒー市場の縮小と1966年以降のシアトル系カフェの進出があり、単なるコーヒーメーカーではなく、日本のコーヒー市場とトレンドをリードし最も愛されるコーヒーブランドとして消費者に提供することにある。驚くほど簡単に、ご家庭でカフェのコーヒーが楽しめる驚きを。2009年4月に顧客限定販売、2010年3月に7800円でスーパー中心に販売、2011年3月家電量販店へ参入経済性とチャネル戦略を慎重に考え合わせながら、2015年8月1日に300万台を突破した。インスタントコーヒーのユーザーは全国に3000万世帯以上といわれる、もっとより多くの人に拡大できないか。転機となったのは2011年3月11日の東日本大震災である。仙台の仮設住宅にバリスタを設置した。そこでコーヒーをサーブしていると世代を問わず多くの人が集まってきて、ある種のコミュニティを形成していった。コーヒーには多くの人を活性化し幸せにする力がある!と確信したのである。

日本のコーヒー市場は年間約500億杯といわれる。日本には600万のオフィスがあり「職場」でのコーヒー需要とコミュニケーションにフォーカスしてコーヒーマシンを職場に無料で貸与を開始し、3年で(2016年3月)24万台を突破した。日本中のコミュニティにポテンシャルがある。お客様の喜ぶ顔が見たい、お客様と一緒に進めるという思いの中であらゆるタッチポイントからお客様の声を集めて次の商品とサービスに活かしていった。病院に大学やその教室、シニアコミュニティ、被災地、さらにこんなところも、消防署、神社、船舶、今まで取れなかった場所へ重要は拡大していった。コーヒー消費量の予測や社内説得ノウハウの提供、コーヒー以外のメニューなども提供していった。展開に当たって注力していることは、<Recruit> メディアやタイアップだけではなく出張デモサービスを重視し実際に気軽に試せて大人気となっている。<Engagement> ネスカフェアンバサダーサンクスパーティ、ベトナムコーヒー農園工場見学、料理教室、ネスカフェアンバサダーパークなど盛りだくさんである。夏場の需要低迷期にはアイスコーヒーサーバーも提供する。ビジネスが拡大している理由としてはアンバサダー→誰かの役に立ちたい→自己実現に繋がる日本人ならではの深層心理に働きかけているからでは。ネスレスイスでも一番のイノベーションとして表彰されているが日本以外の国では展開することが困難なようである。マーケットが成長過程の新興国では難しく、マーケットが成熟した日本やヨーロッパなど先進国で、こうした先進的なマーケティングが必要になってくるだろう。

 

まとめとして、今マーケティングはグローバル化が進む中で新たな段階に移ろうとしている。2014年にフィリップ・コトラー氏が提唱した「マーケティング4.0」という考え方はその中心概念に、顧客にとっての「自己実現」提唱する。<顧客の問題解決によって生まれた価値が、顧客の自己実現に繋がるようなマーケティングこそがこれからのマーケティングの主流となる。>と説く。コトラー氏がこのマーケティング4.0を考案する時にベースとした事例の一つが、ネスレ日本が2012年から展開している「ネスカフェアンバサダー」である。1.手作り感とチームワークに働きかけながら小さなテストとその検証を丁寧に繰り返し成果を大きくしていく。2.人のブランドであること。製品ではなく人によるサービスを主体に人のブランド「ネスカフェアンバサダー」を創り上げる。3・共通できるしくみとして、サービスは進化させ続け本当に望まれるものを実現していく。以上愛されるブランドとは新たなビジネスモデルとしてFace to Faceのつながりの中で「共有価値」とすることが重要である。

次への取り組みはとしては抹茶の消費拡大を目指して、ネスカフェドルチェグスト宇治抹茶は茶筅でたてたお茶の味をお手軽にコーヒーマシーンにて家庭で楽しめる。現実は抹茶の飲料率は1%に過ぎない、テスト販売は2015年北海道から2016年より全国へ展開する。ポリフェノールを多く含む抹茶は健康寿命に意識が高まる日本市場に「おいてポテンシャルは高い。京都府と日本ネスレが協定を結び進めている。もう一つの取り組みはスマホと繋がるバリスタである。IoTコラボとしてSONYと取り組んでいる。離れて暮らす大切な人をより自然に「見守れる」サービスである。一人暮らしの孤独の解消・安否確認などに活用される。
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結びとして

「コミュニティ」ではなく「コモナリティ=共有性」、「コミュニティ」というと、人が集まる場のことを想像するが、人の活動が根拠になって建築が作られるわけなので現在建築の課題は、人間も含む資源とどのように向き合うかにあると考える。資源に対するアクセシビリティの確保、それに対するインタラクションの最大化、それによって生まれる他者への責任。インタラクションを起こすことは、環境を変え、ときにダメージを与えるかもしれない。でも植物や生物の様に再生産される資源もあるし、人のスキルの様に増える資源もある。資源の共有およびそれと関わることを通して生まれるふるまいの共有を通して「コモナリティ=共有」が生まれ、コミュニティを組織化しその靭帯を強めることも可能です。今やるべきことは建築をつくることで地域の資源へのアクセスを良くしてそれをよりよく利用するスキルを高めることであると考える。<東京工業大学 大学院教授 塚本由晴>

この建築(百年以上の耐久性を持つ設計に限るが)をネスレの企業活動に置き換えれば腑に落ちる!

今年も暮れようとしていますがMCEI大阪はマーケティングの未来について議論を続けていきたいと考えています、皆様来年もよろしくお願いします。