今月は日経BPヒット総合研究所上席研究員 品田 英雄氏に3年連続登壇いただきました。テーマは「2016年日経トレンディ ヒット商品予測」ですが、折しもアメリカ大統領選挙の結果が出たタイミングなので、まずはエピソードから始めたい。

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木村太郎氏はなぜトランプ大統領を予測できたのか。
「直感したのは昨年12月。当時の報道を見て、彼の暴言の数々は、米国人が言いたくても声に出せないことだと感じたからです。
移民や経済格差の問題にしても多くの米国人が心の中で思っていた。
それを率直に表現したからこそ有権者に響いたんですよ。
マスコミが想定するトランプ支持者は低所得の白人で人種差別主義者で女性蔑視の人たち。トランプ支持を隠さないほうがおかしい。」だから調査会社の質問にも多くの人が態度を明らかにしませんでした。<隠れトランプ支持>の数は想像以上だと思いましたね。」

予測とは何かと考えさせられるエピソードである。
話したことがSNSにのこりすぐに拡散する、情報は検索すればすぐに出てくる時代にトレンドを予測するためにあなたならどうする。

品田氏は商品開発のポイントとして①情報収集力②企画力③実現力をあげる。
感性に基づく読み方がそれがアウトプットに繋がるのではと説く。
ヒット商品のキーワードとして①オリジナル脚本②リアリティ③リピーターを上げる。
例えば原作をドラマ・映画化することによりその原作との差異が虚構であるのにより現実感を帯びてリピーターを呼ぶ。これがヒットの構造である。
2016年ヒット商品を構成するモノはモノそのものから離れれば離れるほどそこに立ち現れるリアリティの強度が増幅するように感じる。
ランキングの半分以上がその様なモノが占めていて、漠然とした不安定感と不確実性を覚えてしまう。
商品がその機能、仕様(スペック)、用途、デザインで直球勝負できなくて、原型としてのオリジナリティが一度脚本としてひねりを加えられ反転した以外な解釈と価値を生み出していく。それは商品であっても、しくみであっても、空間や施設であってもそうである。

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現実は、常に、反現実を参照する。
現実は、意味づけられたコトやモノの秩序として立ち現れている。意味の秩序としての現実は、その中心に現実ならざるもの、つまり反現実をもっているということである。
反現実とは何か?見田宗介(社会学者)によれば「現実」という語は、三つの反対語を持つ。
「(現実)理想」「(現実)夢」「(現実)虚構」である。戦後という日本固有の時代という意識(ドイツ、イタリアではもうその時代意識は社会的に認められないが。)を、この反現実というモードを規準にして眺めたとき、「理想の時代1945年〜60年」「夢の時代1960年〜75年」「虚構の時代1970年〜90年」に区分する。
その5年後1995年阪神淡路大震災の年を転換点として、そしてその境界から、「現実から逃避」するのではなくむしろ「現実へと逃避」する特異な時代の様相を我々は予測していかなくてはならない。
未来を予測することは自分自身にも、他者の、そして次世代にとってもきわめて重要な意味を持つ。しかし、未来には様々な力が影響するので、人々は未来予測に興味が持てなくなり、刹那的にくらしている。

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例えば市場経済民主主義は、瞬間に価値を見出すように人々を仕向け、過去から生じない未来はないとしても、未来を現在の延長としかみなさない。多くの人々はコンピュータという予言する独裁者に身をゆだねる。
コンピュータは自分に有用で都合のよい分野でのみ予測する。まもなくわれわれはコンピュータの観察対象にすぎない存在となり、人工知能がそれ自体の利益のために、未来を知り、操り、決定するようになるだろう。そのような未来を信じたくない。
そうではなく、未来は誰もが知る事できる。
そして知る事が可能なのである。
出来事を結びつける因果関係に興味を持ち、原因を探究し、分刻みで毎日、未来の小さな歩みを理解し、不変の要素を見出し、新たなものを創造し、論理に従うこと。
将来は何一つ決まっていない。
世界はさらなる自由に向かっている。

 

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最後にジャック・アタリ氏の未来予測のメソードを紹介して、来年以降の備えとしてお役に立てていただきたい。
まず、予測範囲の選択から始める。次に、予測対象の未来分析を5つの段階に区分する。
第一段階の「懐古予測」は、予測対象の根源的なアイデンティティの描写だ。つまり予測対象に「おいておおむね変わらない要素を抽出する。
第二段階の「生命維持予測」は、予測対象の健康状態、生活様式、自己管理方法に関する見解のまとめだ。これには人口が含まれる。人口は未来のあらゆる分析にとって必要不可欠な変数だ。
第三段階の「環境予測」は、予測対象の運命に影響を及ぼすかもしれない関係者(人物、企業、国、環境)の未来分析だ。
第四段階の「愛着予測」は、「環境予測」で重要性を見出した関係者が予測対象に未来においてどのような態度を示すのかを明確にすることだ。
第五段階の「投影予測」は、予測対象の人生のなかで、分かっている、あるいは起きると思われる未来の出来事の分析だ。
その際、予測対象の人生の中で、分かっている、あるいは起きると思われる未来の出来事の分析だ。
その際、予測対象となる者に未来の計画があるのならそれも自己に投影させること。
私はどの段階においても、直感と省察そして傾向の持続と急変を織り交ぜ、掘り下げた質問事項をつくって取り組む。
こうして最も厳格な因果関係を探究し、過去の教訓を導き出す。トレンドが急変する分岐点を常に探す。そうした分岐点は無数にある。
このメソードはすぐに実行に移せる。現在が未来に追いつくとき、現実と予測を比較しながらこのメソードを上達させられる。

参考になればマーケティングの未来予測に使ってもらいたい。