理事長の橋詰です。2月定例会(2016/02/04)のレポートです。

三寒四温、立春の大阪に北九州市門司区から株式会社サンキュードラッグの平野健二社長に来阪いただいた。昨年6月MCEI東京支部の総会でお会いして以来久しぶりの再会。

1956年平野薬局創業から60年、1970年に二代目として株式会社サンキュードラッグを設立され、年商は180億円、北九州市近郊と下関市に特化したドミナント戦略に基づく調剤・ドラッグストアの店舗展開にこだわっている。地元の北九州スペースワールドのスポンサーや健康関連フェアやスポーツイベントのスポンサーになることも多いそうだ。

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「ID−POS活用による新たなマーケティングモデル」が今回のテーマ。

商品流通と小売の役割、小売って何をするの?メーカー依存のマーケティング、規模拡大を狙った高圧的な商談の横行、供給サイドのメーカーが仕組んだ販売促進策による顕在需要の奪い合い、ブランドの使い捨てなどの市場における消耗戦はとても顧客のコトを考えた市場を創造していくような環境を形成していないと語る。

 

小売の「売り場理論」に隠された前提条件に基づく仮説にも鋭く切り込んでいく。「客動線を長くすることで、多くの商品と出会い、客単価が向上する。」顧客の潜在需要を無視して増え続ける存在意味不明のアイテム群、売上=客数×客単価の旧来の認識への異疑、「強い店とは、遠くからでも集客できる店のことである」欲しいもの買うために遠くまで行くというモビリティに基づいた仮説への疑問や遠くまで来てもらうための価格競争は全体として市場を縮小させるという。人口減少社会・高齢化社会に直面する国内においては限られた商圏人口だけで維持できる店舗を目指すべき。「近くて便利である」ということは単純に距離だけではなく時間的な近さも含まれる。北九州の高齢化率は20%を超えており、高齢の方や療養中の方が徒歩で行ける店舗は半径400メートル、徒歩10分の狭小商圏の戦略を進めてゆく。

 

「一人一人のために」より身近に関わることができるパーソナルケアにこだわる平野氏がPOSからID-POSへのシフトが加速する中、モノに対する欲求の強い時代である高度経済成長期の終わり(1970年)にサンキュードラッグを設立させ、考えた必然の結果なのだろうか。

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「モノの動きからお客様の動きへ」POSデータは「いつ(When)」「どこで(Where)」「何が(What)」「いくつ(How)」「いくらで(How much)」売れたのかをモノに準拠して把握するが、ID−POSでは更に「誰に(Who)」というデータまで取得できるのでまさにお客様に準拠する。ID−POSの登場によりPOSデータは消費者行動を分析する為のツールとして活用機会を拡大していく。ID-POSマーケティングは第一世代の購買行動の把握によるデシル(10分類)の適用から第二世代の潜在需要発掘へと向かう、顕在需要を販促で奪い合う状況から顧客の潜在需要発掘と育成(欲しいものへの気づき)を喚起し、限られた商圏での市場深堀を進めてゆく。欲しいモノがあるから来店する、ブランド育成と顧客育成が合致する、メーカーと小売のコラボレーションモデルが実現してゆく。

 

「お客様を知る」、デモグラフィ、データの質的定義、購買行動、未購買者の発掘などによりBIGデータを深堀しお客様一人一人の生活圏を全てデータ化しDEEPなデータとしていく。

 

「商品の価値を定義する」、商品固有の潜在価値、顧客にとっての複数の価値、価値の属性など顧客の今その時の価値、顧客が誰でどの様な状況かが商品の価値を決める。

 

「価値の伝達」、メーカーが言うブランド価値による商品の属性ではなくその人にとって何が嬉しいモノなのかを伝えることが本質である。

 

「リピート」、何故リピートしないのか?リピートを喚起するには、買う理由と買い続ける理由をモノではなくヒトで共通項を見出していく。

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マーケティングツールとしての店舗の概念拡張は店舗の限界を越境して、さらにDEEP&BIGへの拡張であるID−POSマーケティングである第三世代への挑戦:SOO(Segment of One & Only)オムニチャネル「ドラポン!」のサイト構築へと向かっている。顧客の論理に従って、最高の顧客体験を与える様な、いつでも、どこでも、顧客が好きな時に、注文ができて好きなときに好きなところで好きなものを受け取れる、絶対「個客」主義へ。

 

サンキュードラッグは2007年から自社と取引のある大手メーカー・卸問屋のスタッフと一緒に、顧客の購買に関する潜在需要の掘り起こしに関する研究を行う「潜在需要発掘研究会」を月一回開催している。メーカーマーケティングとリテールマーケティングのせめぎあい。メーカーの思い込み仮説が覆され、リテールの売り場実現力の不足が指摘される。しかも数値検証が伴うので仮説が仮説のままで終わらない。平野氏の鋭い切り込みが続く。

 

はっきりしてきたコトは、POSデータによって様々な情報を得ることができても、そこから分かることは事実のみであるということだ。顧客の購買行動の理由や「買いたい」と思った理由までを示してくれるものではない。事実としてのデータから「顧客」ではなく「個客」の購買心理や購買行動に意味を持たせるのはマーケティングに関わる者のセンス次第である。

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マーケティングの50%はサイエンスで後の50%はアートである。平野氏が一橋大学時代に恩師から受け継いだ言葉が印象的であった。