少し暑さの残る大阪、内田洋行様のプレゼンテーションルームにてインタッチ・コミュニケーションの岩原雅子氏から「グローバル企業のコミュニケーション」についてお話をいただきました。岩原氏が30年勤められた企業は175年以上続くグローバル企業P&Gです。正直なところお話をいただくまでは世界70か国に展開し、全世界の売上が830億ドル、社員10万人を擁する巨大グローバル企業に対して、大変失礼ではあるが、冷徹、非人間的、ドラスティク、なイメージを持っていました。しかし、簡単にその先入観は覆されました。

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P&Gの全ての活動の原点は「企業理念」である。
企業目的、共有する価値観、行動原則が70か国10万人の社員を方向づける。ルールではなく理念でなくては同じ方向に全社員を動かすことはできない、そのために企業理念の浸透が必要である。
Purpose/Values/Principles PVPである。

複雑ではなくシンプルな社内コミュニケーションは90年頃から社内公用語として英語が使われていて、全ての報告書はワンページメモで収まるように書き方のスキルを個人個人トレーニングする。
研ぎ澄まされたパラグラフは誰が何をどのように、その背景、提案の内容とその良さ、最後にNext Step,それぞれが7行で納められる。

会議でも何を目的とするかを明確にし、終わりには必ずNext Stepを確認する。
誰が発言しても敬意をもって受け入れるフラットな空気感は個人に在る潜在的な多様性を引き出し企業戦略につなげていく。

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トップのメッセージはビデオメッセージで全世界全ての部門のセッションにて浸透させていく。社員一人ひとりが誠実であること、全ての個人を尊重すること、そして常に正しいことを行うというP&Gの伝統を土台として、キャリアディスカッションがなされ、自分で作ったドラフトをもとにワークプランが作られていく。
評価基準とフィードバックは世界共通であり透明度の高い評価基準に欠点とかウイークネスという言葉はなくインプルーブメントとオパチュニティが重視されネガティブではなくポジティブである。
さらに世界共通の人事制度を確立し誰もが世界のどのポストへも即座に移動できる。最後に内部昇進制である、P&Gは180年の歴史のなかでヘッドハンティングは行わず全員生え抜きで構成されているが、全員生え抜きでも多様性は在る。

多様性を尊重し重視することはイノベーションも達成しやすく、消費者の多様性にも柔軟に適応、対応していける。
だからP&Gは企業理念の浸透をベースとして誰にでも分るコミュニケーションで組織の透明性を実現し世界中のお客様の信頼に答える。
日本における3工場のうちパンパースを製造する明石工場長はポーランド出身の女性で、SKⅡを製造する滋賀工場長は日本人の女性だそうです。素晴らしい!

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Less is More 20世紀の多様なモダン建築を生み出した巨匠ミース・ファンデル・ローエの言葉を思い浮かべました。
岩原さん有難うございました。

(2015年10月9日 橋詰 仁)